医学研究
これまでなされてきた水俣病研究は、以下のような水俣病をめぐる情勢の動きの中で、研究内容を把握していくと、その流れがよく理解できます。
1. 水俣病公式確認直後から水俣病診査協議会(S31年~S35年)
- S31年、熊本大学・公衆衛生、小児科、第1内科、第2病理などの各講座による水俣現地での調査・研究が始まる。
- S31年~S34年、熊本大学第1内科の徳臣晴比古氏、岡嶋透氏ら、水俣病患者34名を診察し、報告した。
- S35年、徳臣氏が水俣病診査協議会に参加。これ以降、徳臣氏は、S56年までの約20年間にわたり、16の医学雑誌に、初期診断された30数症例の症候頻度表(10年後、20年後の追跡を含む)を掲載し続ける。
2. 水俣病診査協議会から新潟水俣病確認(S35年~S40年)
- 水俣病診査協議会での、S35年からS40年までの認定数、わずか33名。
- 徳臣氏、岡嶋氏らによる、S35年水俣病終息説(「神経研究の進歩」昭和38年3月)。
3. 新潟水俣病確認から水銀パニック(S40年~S48年)
- S40年、阿賀野川流域疫学調査。
- 新潟大学椿忠雄氏、水俣病認定に感覚障害のみを有する軽症例を含める。
- S41年、日本内科学会講演会で椿氏が症例報告。この時、徳臣氏が「水俣病志願者」発言を行う。
- S43年、チッソ排水停止。
- S44年、水俣病第一次訴訟提訴。
- S46年、「公害をなくする県民会議医師団」結成。
- S47年、椿氏、水俣病患者をめぐり、「軽症例や非定型例を心因性や詐病ときめつけずきちんと診るべき」と主張(「科学」昭和47年10月)。
4. 水銀パニックから福岡高裁判決(S48年~S60年)
- S46年、熊本大学「10年後の水俣病研究班」(通称・第二次研究班)調査開始
- S48年5月、熊本大学水俣病第二次研究班の報告で、対照地域での有所見者の存在から、第三水俣病の可能性が報道された。当時、水銀を使用していた苛性ソーダ工場が全国に49あり、日本中が水銀パニックとなった。
- S48年8月、椿氏が環境庁専門家会議座長となり、第三水俣病を否定していく。以後、椿氏は水俣病に関する研究から、次第に手を引いていく。
- S49年1月、水俣診療所開設。
- S49年、椿氏の姿勢転換を示す論文(「神経研究の進歩」昭和49年10月)。
- S50年、桂島調査。
- 「S52年判断条件」通達。
- S53年、水俣協立病院開設
5. 水俣病第二次訴訟福岡高裁判決から「政治解決」(S60年~H7年)
- S60年、水俣病第二次訴訟福岡高裁判決、感覚障害のみの水俣病を認める。
- S60年、「医学専門家会議」が、昭和52年判断条件を擁護。
- H1年、熊本大学第一内科荒木淑郎氏ら、熊本県農村部住民の神経障害調査し、「四肢末梢優位の感覚障害は、1%未満」。
- 水俣病第三次訴訟判決。
6. 「政治解決」から、最高裁判決まで(H7年~H16年)
- H7年、水俣病「政治解決」、大量の保留者をも棄却し「解決」。
- 水俣病関西訴訟、原告側証人浴野成生氏ら、被告側証人衛藤光明氏ら。
- H9~11年、日本精神神経学会・研究と人権問題委員会・水俣病問題小委員会、昭和52年判断条件、昭和60年医学専門家会議について、調査し、これらの判断に医学的根拠がないことを批判。
- H11年、内野誠氏ら、水俣病認定申請者のデータをまとめ、棄却者の実態があきらかとなる。
- S57年に提訴された水俣病関西訴訟、H13年、大阪高裁で、患者側勝訴。
7. 最高裁判決から現在まで(H16年~H24年)
- H16年、関西訴訟最高裁判決で、国の責任を認める。・判決後、大量の水俣病認定申請、保健手帳申請。
- H17年10月、ノーモア・ミナマタ訴訟提訴。その後、各地で水俣病を巡る訴訟が提訴される。
- H20年7月~H21年7月:高岡滋原告側証人尋問
- H21年7月、水俣病特措法成立
- H21年9月20~21日、不知火海沿岸住民健康調査、水俣病検診が全国に拡がる。
- H22年1月、被告側臼杵扶佐子氏証人尋問取り下げる。
- H22年2月、高岡証人、臼杵意見書に対する反論書提出。
- H23年3月、ノーモア・ミナマタ訴訟和解。
- H24年6月、水俣病第検診、1413名参加。
- H24年7月末、水俣病特措法申請締切
8. 水俣病特措法締め切りから現在まで(H24年~)
- H25年4月16日、溝口訴訟、最高裁判所で、認定審査を放置された患者が、感覚障害のみで水俣病と認定される。
- H26年3月7日、環境省環境保健部長通知「公害健康被害の補償等に関する法律に基づく水俣病の認定における総合的検討について」
- H25年6月20日、ノーモア・ミナマタ第2次訴訟提訴、熊本地方裁判所
- H27年10~11月、天草・奄美地域で「新有病率調査」実施。